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風力発電は地球にやさしいか??

電気を作るとき,“地球に優しいクリーンエネルギーとは?”と聞かれて,何を思い浮かべるでしょうか?
太陽光発電,風力発電,水力発電,潮力発電,地熱発電といったものが,二酸化炭素や窒素酸化物,硫黄酸化物を排出しないクリーンな発電方法の代表例と言えるとおもいます。

その中でも,風力発電に近年注目が集まっています。
地球上で開発可能な風力発電による発電量は約72TW(テラワット)といわれ,これは全世界の電力需要量14TWの実に5倍に匹敵するとんでもない発電量です。計算上は,風力発電のみで人類の電力需要量を賄えることになり,原子力発電の問題や地球温暖化の問題をクリアできる夢の発電方法なのです。

そのため,日本でも急速に風力発電施設の建設が進められており,2004年度現在で,日本全国に924基,総設備容量は93万キロワットの風力発電所(ウインドファーム)が設置されています。

しかし先日,利点だらけの風力発電に対し,問題提起するひとつの記事を見つけました。

風力発電国内大手の「ユーラスエナジージャパン」(東京都港区、祓川清社長)が北海道根室市の納沙布岬に近い丘陵地で進めている風力発電施設(15基)計画について,日本野鳥の会(本部・東京都)が,「環境省のレッドデータで絶滅危惧(きぐ)1Bに分類されているオジロワシが近くに生息しており,巨大な風力発電の風車の設置がオジロワシの衝突死を引き起こすなどの,生息への重大な影響が出る怖れがある」として,同社に意見書を提出した,ということです。

実際に,風力発電の巨大な回転羽(ブレード)に衝突して死ぬオジロワシの例は,すでに北海道で5件が確認されています。

納沙布岬の風力発電所計画の問題点は,風力発電を効率的に行える場所が,オジロワシの生息域と重なっているということなのです。
たかが鳥・・・そう言ってしまえば身もフタもありませんが,風力発電所の設置が貴重な鳥の生息を脅かし,ひいては地域の貴重な生態系を破壊するのであれば,風力発電は“地球には優しいかもしれないが地域環境や生物にはやさしくない”といえると思います。
水力発電というクリーンな発電を行うダム建設が,地域環境や生態系の破壊をもたらすとの理由で全国的に反対の風潮があることと,本質的には同じです。

風力発電は,そのクリーンなイメージが先行し,その陰で起こる環境破壊の面があまり伝えられません。
風力発電所が設置される場所は,海岸,丘陵地,山の尾根など,生物の生息場(ビオトープ)として重要な場所であることが多いのに,そのことには一切触れられずに建設されたり,計画されたりしている事例がたくさんあります。

今回は,“風力発電所をとある山間部に建設しようとしたときの問題点”をビオトープの観点から挙げてみたいと思います。

●風力発電事業の問題点 ~建設工事がもたらす影響~
ひとつめに,山間部に発電用の風車を設置する場合,まず,設置する場所の樹木などを伐採し,地面を平らに削って土台を作らなければなりません。設置台数が多いほど伐採・掘削の面積は広くなり,山の地形が変化し大量の土砂を運び出すことになります。地形が変って緑が減った山は保水力が低下し,降雨時の土砂災害を引き起こす要因ともなりかねません。

ふたつめに,山の上に風力発電所を設置する場合,その資材を山の上まで運び入れなければなりません。そのためには工事用の道路を山の中に建設する必要があります。工事用の道路といっても,ちゃちなものではありません。風力発電のブレードの大きさは,大きいものになると一枚が30mを超えます。これを運ぶためには長大なトレーラーが通れる緩やかな勾配の広い道路(幅約6m)でなければなりません。山奥であればあるほど長い工事用道路が建設されることなり,“森林破壊だ”として批判を受ける林道工事と同レベルの樹木の伐採,地面の掘削が行われることになるのです。

このように,工事段階でかなりの環境破壊が起こることになります。
大掛かりな地形の改変によって数多くの生き物が生息場所を失います。地形が変わって生き物の種類や数が減れば生態系のバランスも崩れる怖れが出てきます。

●風力発電事業の問題点 ~発電所の存在と稼動の影響~
風力発電所の稼動は,空を飛ぶ鳥に影響を与えます。日本の山間部には,クマタカ,オオタカ,イヌワシなどの猛禽類と呼ばれる大型の鳥が生息していることが多いのです。特に大型の猛禽類は山間部の上昇気流を利用して移動し,狩りをするものが多く,風力発電が効率よく行える範囲と猛禽類の生息範囲がバッティングする確率が高くなります。そうなれば,先のオジロワシの事例のように,風力発電施設のブレードに衝突死する危険性が高くなります。そうなれば,もともとの個体数が少ない猛禽類は死亡したり逃避したりして,風力発電所が建設された地域からは姿を消すことにもなりかねません。

風力発電施設の影響により,その場所から猛禽類が姿を消してしまえばどうなるでしょう?
猛禽類は,生態系の中で頂点に立つ生き物です。この頂点に立つ生き物がいなくなれば,それまで猛禽類が餌としていた鳥やネズミなどが増え,生態系のバランスを崩し,地域の生態系を変えてしまう怖れが出てきます。

●風力発電をどう考えるか?
風力発電の問題点ばかりを列挙しましたが,エネルギー需要や地球規模の環境保全を考えると,風力はこれからも開発が推進されるべきエネルギーであることは間違いありません。
だからといって,やたらめったら無秩序に建設される現在の流れはよくありません。貴重な自然が残る地域には建設しないことが重要ですし,そのような場所がどこにあるのかを調査する知恵と知識と努力する姿勢を事業者が持つことが重要なのです。

風力発電がいかにクリーンなエネルギーとはいえ,人間が自己の人間活動のために設置する非自然物であることに変わりはありません。地域の環境と上手く折り合い,地域の生き物達との共存を最優先に考えてはじめて,風力発電は“地球に優しい”エネルギーとなり得るのです。

●おまけ
これは「いきもの雑学絵日記」なのに,今回は“絵”が出てきませんでした。
なので,おまけとして2006年1月に新たに追加された「風力発電所」を示す地図記号を紹介します♪
風力発電所の地図記号

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コメント
海外の風力発電って、もっとだだっ広いところに風車を沢山立てますね。これとて環境には何らかの影響を及ぼしているのでしょうけど、日本の狭さ故の問題も多いんでしょうね。

この地図記号、曲がった飛行機みたい。

2006/11/11 16:39| URL | タカハシ  [Edit]
タカハシさん
コメントありがとうございます♪
日本の地形や環境を考えると,風力発電は日本には合わないような気がします。欧米のような大規模な風力発電所を作るのは難しいですし,そうなれば効率も悪いし。
それに,日本人ってひとつのいい方法を見つけると,どこでも同じ事をやろうとしますが,地域の環境の特性に応じて,太陽光発電とかバイオマス発電とか,多様な発電方法を選択するやり方で,総合的なクリーンエネルギー開発を行って欲しいものです。
何より,自然の中にそびえ立つ巨大な白亜の風車群の異様さ,ミスマッチさに違和感を覚えてしまいます。
主観的なことでしょうが,風車が立ち並ぶ景観はなんとなく日本人の感性にも合わないんじゃないかな,と思ったりします(^^;

地図記号,なんでこのバランスなんでしょうかね??

2006/11/11 20:32| URL | caridina  [Edit]
風力発電
千葉の大学に通うものです。今年の夏、根室の風力発電を実際に見てきました。
実際に間近で見る風力発電はものすごくでかく、ものすごくスピードがありました。これでは鳥は避けきれないなと感じました。
現在、風力発電の設置には環境アセスの調査が必要ないそうですね。これには法律の改正が必要なんですが・・・。
環境を保全するための風力発電と、野鳥を守るための自然保護との矛盾というか、もどかしさを感じました。
ただ、風力発電の設置場所を数十m変えても発電される電気量は変わらないと聞きました。それならば、少しの努力で双方が納得するようにできると思います。
長々と失礼しました。

2008/09/27 00:25| URL | yaredeki  [Edit]
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2010/02/04 13:36| |   [Edit]
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2012/07/07 11:43| |   [Edit]
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