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絶対においしいモクズガニ

この時期になると,毎年とても食べたくなるカニがあります。
その名は“モクズガニ”
日本全国の河川に棲む,甲幅(甲羅の幅)が10cm近くにもなる大型の淡水産のカニです。
モクズガニは秋になると一斉に川を下り,河口付近で産卵をします。それを狙ったモクズガニ漁が今の時期に最盛期を迎えます。
美味しい食材として,川の環境を語る生き物としていい材料なので,今回はこのモクズガニについてお話します。

●モクズガニ

モクズガニ


甲幅7-8cmほどになる大型のカニ。
はさみに長い毛(軟毛)がはえていて,甲羅の前から横にかけてノコギリの歯のようなとげが3対ある。体色は全身が緑黒色~黒褐色をしています。

日本全国の河川に広く生息し,水田や用水路,海岸などでも見られる。夜行性で,昼間は川の石の下などでじっとしていることが多い。食性は雑食で,貝類,ミミズ,魚,水生昆虫,植物などを好んで食べます。

モクズガニは,春~夏は川に生息し,秋~冬にオスメスとも産卵のために海へ下っていき,そこで交尾・産卵します。
卵から孵化した幼生はゾエアといい,浮遊生活を行い,5回の脱皮を経てメガロパという幼生になった後川を遡ります。メガロパは脱皮を繰り返して成長しながら,川を遡上していきます。
カニの形になってから、2~3年で成体となり川を下っていき,交尾・産卵を行います。
このような生活を送ることを、通し回遊(淡水域と海水域の間の回遊)といいます。モクズガニは,塩分濃度のある場所でないと交尾・産卵・卵の発生・幼生の成長ができません。

○食材としてのモクズガニ
私が思うに,モクズガニはカニの中で最も美味しい種類のひとつに入ると思います。
モクズガニは,高級食材として有名な“上海ガニ”と近い種類(上海ガニは和名を“シナモクズガニ”といいます)ですので,美味しいはずです。
食べ方は,茹でたものをそのまま食べるほか,カニ全体をすり鉢で細かくすりつぶして水で濾し,味噌汁に入れて食べる“ガン汁”があります。
このガン汁は,全国で郷土料理として出されているところが多く,一度食べると人生観が変わるくらいの美味さです(・・・だと私自身は思います)。

ただし,モクズガニには,ベルツ肺吸虫という寄生虫が寄生していることがよくあります。この寄生虫が人間の体内に入ると,肺気腫を引き起こす恐れがあるので,生では食べないようにしましょう。よく加熱すれば心配はいりません。

モクズガニは漁獲量がそれほど多くはないので,普通のスーパーや鮮魚店ではほとんど売られている姿をみることはありません。
しかし,今頃の時期,ちょいと田舎にドライブにでも出かけると,道端で川の漁師さんが“ツガニ”とか“カワガニ”,“ズガニ”などの名前で売っているのをよく見かけます。
価格は地域によって様々ですが,九州地方(熊本や大分など)では1匹200~500円位が相場でしょう。ネット通販などで購入するとさらに高いと思います。


○モクズガニと河川環境
モクズガニは雑食です。とくに,河川の生態系の中では,魚などの小動物の死体を食べたり,アオミドロなどの藻を食べることによって河川の富栄養化を防いだりする,分解者の役目を担っていると考えられています。そのため,モクズガニは水の汚濁にもわりと強い生物とされていて,生活排水や下水排水に晒される都市部の河川にも普通に生息しています。

しかし,そんなモクズガニも近年は全国的に少なくなっているのです。その原因はいったい何なのでしょうか?

モクズガニの生息数を減らしているのは,河川改修や河川構造物(ダムや堰)の存在によるものと考えられています。
モクズガニは川と海を回遊する生き物です。そのため,川に巨大なダムや堰が建設されると,それを乗り越えて上流へ移動したり,あるいは産卵にために海へ下ったりということが非常に難しくなります。
また,河川改修により護岸や川底がコンクリートで固められると,夜行性のモクズガニは昼間に隠れる場所を失い,特に小さな子供のモクズガニは敵に見つかりやすくなって食べられる数が増えてしまうのです。

このようなことが原因で,日本全国の河川でモクズガニの個体数が減少し,生息範囲も縮小しているのだと考えられます。

○モクズガニがいなくなるとどうなるのか?
それでは,川からモクズガニがいなくなるとどうなるのでしょうか?
モクズガニは,河川の生態系の中では分解者の役目を担っていると書きました。分解者がいなくなるということは,川の汚濁(富栄養化)が進むことを意味しています。
もちろん,河川の生態系の中で分解者の役目を担っているのはモクズガニだけではありません。モクズガニがいなくなったからといっても,川の富栄養化が急速に進行する訳ではありません。
しかし,生態系と言うシステムは,長い年月をかけて複雑にバランスよく出来上がっているものです。ひとつにほころびが生じれば,そこから連鎖反応的に生態系が崩壊する危険性もあります。
モクズガニがいなくなることで,思いもかけない環境破壊を引き起こしたり,思いもかけない生物が姿を消したりすることが起こりえるのです。

河川改修もダム建設も,本当に必要なのであれば仕方がありません。しかし,生態系の構造やバランスを崩さないようにする最大限の工夫と努力が必要なのです。

美味しいモクズガニを将来も食べ続けることができるように。

いつの間にか秋・・・モズのお話

右腕の浮腫のため,しばらくお絵かきができませんでした。
気が付けば2ヶ月以上もブログの更新をサボってしまって,気が付けば夏から秋へと季節は移り変わってしまいました・・・(^^;

と,いうことで,今回はいきなりですが秋の訪れを告げる鳥,モズのお話です。

●モズ(イラストは雄)

モズ♂


日本の農耕地や林縁に普通に見かけるモズは,北海道から九州まで広く分布し,一年中その姿を見ることができる鳥(留鳥)です。
一年のうちでもその姿を見かける機会が多くなるのは,秋です。
この季節になると,モズはギィー,ギチギチギチギチギチギチ・・・という鋭い鳴き声で鳴きます。これを“モズの高鳴き”といい,秋の風物詩とされています。この声のする方向を探すと,開けた場所の木の枝や電線に止まったモズの姿を見つけることができるかもしれません。

モズは緑の多い住宅地や公園などでも見られますが,本来は樹林と農耕地のような開けた環境がセットになった環境を好みます。これは,繁殖は樹林地や藪で繁殖し,農耕地で餌を採るという彼らの生態によるものです。

この鳥の面白い習性は,

?こんなかわいい姿をしていて,獰猛な殺し屋であること
?“はやにえ”を行うこと

です。

?モズは獰猛な殺し屋
モズは肉食です。
餌となるのは,バッタ類や甲虫類,トンボ類などの昆虫類,トカゲやヘビ,カエルなどの両生・は虫類,フナやタナゴ,ドジョウなどの魚類,アメリカザリガニなどの甲殻類,そしてスズメ,カワラヒワ,ツグミなどの小型・中型の鳥など実にバラエティーに富んでおり,時にはサシバなどの自分より大きな鳥類までも襲って餌としています。
よく,木の枝に止まって,長い尾を上下左右に振りながらじっとどこかを見つめているモズを見ることができますが,これは獲物を一撃で捕らえるために準備を整えているところなのです。

?“はやにえ”っていったい何?
モズは,捕らえた餌を木の枝や有刺鉄線などに突き刺したり挟んだりする習性があります。
これを,“モズのはやにえ(早贄)”といい,モズの不思議な生態のひとつです。
秋から冬にかけて,モズの姿や鳴き声が聞こえる範囲の農耕地や公園や緑地を歩いてみてください。
木の枝に突き刺さって死んでいる昆虫やトカゲやカエルなどを見られるかもしれません。

はやにえギャラリーはこちら♪

では,モズは何故”はやにえ”を作るのでしょう?
実は,これは未だに良く分かっていません。
主な説は,
本能説(殺戮本能により目の前の餌を手当たり次第に捕まえてしまうため)
固定説(獲物を細かく引きちぎるために刺して固定している)
なわばり説(冬のなわばりの目印としてはやにえを作る)
貯食説(餌が不足する冬に備えて餌を蓄えるため)
がありますが,どれもまだ確定的な証拠となるデータがとれていないようです。

●全国的に減少しているモズたち
先にお話したモズのはやにえは,万葉集に「草具茎(くさぐき)」として登場する古くから日本人に知られた習性ですし,秋の高鳴きは秋の風物詩ともなっていますし,モズは昔から日本人にとってはとても馴染み深い鳥です。

しかし近年,モズは全国的に減少傾向にあります。
環境省が1970年代と1990年代に行った調査でも,各自治体や自然保護・環境保護団体が行っている調査でも,その減少は明らかとなっています。
その原因ははっきりとは分かっていませんが,いくつかの調査結果から類推されるのは,モズの生息環境である樹林と草地や農耕地などの開けた環境のセットの環境(いわゆる里山環境)が減少していることによるものではないだろうか,というものです。
とくに,農耕地や草地といった開けた空き地的環境の減少がモズの減少に拍車をかけているとも言われています。

モズの餌のバラエティーを見ても分かるように,モズの餌となる昆虫や小動物は樹林の林縁や草原や畑でよく見かける生き物です。
都市化や市街化によって草地や農耕地が次々となくなっている現代,それを食べるモズもおのずからいなくなるというのは,考えてみれば当然のことなのです。

ただ,鳥類は非常に環境適応能力のすぐれた生き物です。

“樹林地と草地のセットの環境”を都市域や市街地の中に上手いこと創出していけば,都市の環境に上手く適応したコゲラやヒヨドリなどのように,都市環境にも適応するようになるかもしれません。
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